PLMとは何か
PLMとはProduct Lifecycle Managementの略で、その名の通り、製品の企画開発から市場で使用されるまでのライフサイクル全般にわたる情報を一元管理するシステムである。モノづくりにかかわるすべての部門がユーザとなりうるが、特に利用する部門は製品の設計・開発部門および生産技術部門である。製品を設計し、それを具現化する過程で情報基盤として活躍する。
企業では様々なシステムを利用している。例えば、全社員が利用する勤怠管理や出張申請などのシステム、管理部門が利用する財務会計・管理会計・人事管理などのシステム、生産現場で利用する生産実行管理・設備資産管理などのシステムがある。これらと同様に設計・開発領域で利用するシステムがPLMである。
エンジニアが求めるツールとは
従来から設計・開発部門で活躍するITツールと言えば、CADやCAEがある。言わずもがなではあるが、CADは製品形状を定義するためのツールであり、CAEはバーチャル上で製品の性能を評価するツールである。これらのツールは設計行為そのものを支える必須ツールだ。野球選手にとってのバットとグローブみたいなものだろう。
生産技術部門においても近年、生産ラインを3Dモデルでバーチャル上に構築したデジタルツインを利用して、製品組立ラインの実現性や生産能力の検証を行う技術が浸透してきた。これもまた、生産技術者にとっては工程設計行為を支える強力なツールと言える。
さらにAIを用いた最適設計ツールなども出てきており、各企業で評価・導入が進められている。
エンジニアは概して、設計行為・設計結果に関心を持っており、これらのような直接設計に使えるツールの高度化を期待している。
PLMはインフラである
PLMはこれらのツールとは異なり、インフラの位置づけにあたる。一言で言えば、設計情報を適切に管理するシステムである。エンジニアが期待するような直接設計に使えるツールではない。そのため、新システム導入で期待を膨らませたエンジニアが、PLM導入過程で期待はずれだったと失望することが多い。
しかし、情報の適切な管理は大変重要である。情報管理システムを導入していない設計・開発の現場では、余程しつけの行き届いた部署でない限り、情報が散在する。複数の人間が参加し、自由にファイルを作成・コピー・変更・削除できてしまう環境では散らかる方が自然だ。そうなると、必要な情報を探すムダや同じ情報を何度も作成するムダが発生する。
PLMを導入することで各情報を整理整頓でき、情報同士の関連付けや、変更履歴も管理できる。その結果、様々なムダを排除して、業務を効率化することができる。CAD・CAE・デジタルツイン・AIなどのツールのインプット・アウトプットデータを適切に管理することで設計を下支えする強力なインフラ基盤がPLMである。
あまり派手さのないシステムではあるが、いま必要なシステムだと確信している。
このブログではPLM導入により得られる効果や導入の進め方などを語っていく。毎回読み切りとし、どこからでも読んでいただける構成とした。是非気になるタイトルがあればご一読いただきたい。
